万里の長城で遭難

万里の長城で日本人のツアー客が遭難した。
北京郊外は大雪に見舞われ、遭難した方々に死亡者がでるほど深刻な状況です。


何を隠そう、ぼくも2003年の11月に万里の長城で遭難した経験がある。
今回の遭難事故のニュースを知った時。『こうやって無事に帰還したのもちょっとした偶然だったなのかなぁ。』と感じずにはいられないニュースだ。



今回の遭難場所は八達嶺という、長城の場所でも有名な場所でかなりの観光化がされ、十分安心して観光ができる場所だと認識していたのだが、秋も深まり大雪に見舞われた場合には一変して危険な場所に豹変してしまうのだと怖くもなりました。


ぼくが遭難した場所は『司馬台』という同じく長い長い万里の長城の中でも有名な観光名所である。
そして司馬台は観光地で有名であるにもかかわらず当時はあまり補修箇所が少なく、悠久で過酷な自然環下に晒されたボロボロの長城が見れるということでも有名でした。


当時、北京郊外内の綺麗な紅葉を見逃してしまった数人の友人と一緒に何故か紅葉を見に行く小旅行がなぜか万里の長城の司馬台へ行く事になりその流れで遭難してしまいました。(中国の紅葉も日本の紅葉と同じくらい綺麗ですよ)


司馬台に着き勿論、全然紅葉を楽しめなかったので、この小旅行の目的が『司馬台長城を攻めまくる』に変わってしまい、観光客が全然足を踏み入れていないと思われる場所まで(かなり遠くまで)攻めこんでしまった。


司馬台へ行ったことがある方はご存知だと思うが、司馬台の深い場所は長城の両脇が完全に崖。つまりは大変危険。手すりやその他安全装置など皆無、幅30cm-40cmくらいの城壁の上を四つん這いになりながら前に進むという、命がけのまるで何しに来たかわからない状況も余裕でぶち当たる場所なのです。


そして、奥に進むにつれ、完全に度胸試しになってしまい。気がつけば全員万里の長城を攻めることにヒートアップし、とうとう日が暮れてしまった。夜に城壁の上を這いつくばって戻るのはあまりにもリスキーすぎる。。。そして全員愚かすぎる。。。



『帰れねぇ。。。』

気がついた時。
まるで、先の大戦で戦線が伸びきり補給が断ち切れた東南アジア戦線の旧日本軍兵士のような絶望感がぼくを襲った。


近くの見張り台だったと場所だと思われる小さな建物で暖を取る事にし、仲間とともに朝を待つことにした。


その仲間だが、バングラディッシュ人など、全員が雪が降らないような暖かい地域の出身者で、雪や寒さに対してかなり舐めた主観を持っていると思われる人たちの集まりだった為、見張り台で一晩を過ごすと決めてからの最初の1時間くらいは意味のない猥談等で過ごすことができました。が、寒さが本格的に深まっていくにつれみんな無言になり、後悔の念ばかりが渚の波の如く数秒ごとに頭の中を占拠していくだけでした。


仲間が持っている全ての食料は、ぼくが持っているスニッカーズ1本のみ。水は各自ペットボトル1本ぐらいは持っていたと思うが、寒さの余り飲むきにもなれない。

真っ暗な中、見張り台から見える長城の姿はまるで巨大な漆黒の龍が山に横たわっている様で壮観であった。
そして、カラッカラに乾いた空気と冷たい大気は夜空の星々を一切のフィルターを通さずに見ているような気がして胸がいっぱいになった。


そして最大の問題は、クタクタヘトヘトなのに寒すぎて一切寝れない現実で寝ちゃえば直に朝になると思っていたせいか、寒すぎて寝れないという経験はこれが初めてだった。





日が昇り無事引き返すことができましたが、雪が降らなくて本当に良かった。