上海-北京の車窓から

上海-北京の飛行機並びに寝台列車のチケットが取れず、なんと約11年ぶりに中国大陸の"硬座"というチケットを泣く泣く入手。

この"硬座"の響きはいつ聴いても背筋がピンとなる。

大陸の長距離列車はおおまかに5種類の座席を有し、上から

1・ちょい豪華寝台
2・質素でちょい狭寝台
3・ちょい豪華広め座席
4・硬いベンチみたいな座席
5・席なし

の5種類である。今回手に入れた"硬座"は勿論、大陸長距離列車カーストの最下位から2番目の"硬いベンチみたいな座席"である。

11年前、ぼくは若さ故に有り余る体力を使いこの"硬いベンチみたいな座席"を最大の武器に大陸の様々な地域を旅した。

最大、3人が横に座れる席で、材質は理科室の実験テーブルに近い。勿論硬く、背もたれは無慈悲な角度、つまり直角に反り立っている。
表面がかなりツルツルなので、チョットでもダラリと崩した体勢に変えようとするとそのままスルリと座席から身体が飛びててしまう。
よって、それ形に身体も直角に合わせて座らないといけないので、次の日の朝にはお尻も背中もペッタンコになっていて。かなりの心身の疲労から旅先では物凄い後悔の念に駆られる。
しかし、11年前はお金が無いので選択肢はこの"硬いベンチみたいな座席"一本のみとなるのであった。

11年前の"硬いベンチみたいな座席"の旅のエピソードは数しれず。。。なので別の機会にブログに記するとして、今日は今回の"硬いベンチみたいな座席"30歳のおっさん×2人の上海〜北京編(ぼくとおきゃんぴ)を記することにする。




18:03分
列車に乗込む。なかなか、並ばない民族が思った以上に並んでいるのが微笑ましく"硬いベンチみたいな座席"のラゲッジスペースはリアル椅子取りゲームなので、狭い改札をくぐり抜けると乗客の皆さんはダッシュで車両に乗込む。が、ぼくらは何故か急ぎたくないので歩いて乗込む。

18:04分
車両のトイレの隣にある手洗い場に中国人の角刈り日焼け中年のおっさん×2人がまるで"魔法に掛けられ石になってしまった哀れな人"のように洗面台とその下に座り固まっている。マジで動かないし、しかも少し微笑んでいる。恐らく、座席が無いまま乗り込んできた人達であろう。
意味わからん。

20:45分
トイレに行く。
車両の一番端に2つの個室トイレがある。左の個室トイレに入った。
そこには使用済み女性用生理用品が和式便器を有するこのトイレのゆかに無数に落ちている。しかも、赤ちゃんのパンパースのように汚れた部分を内側に丸めて捨てている訳では無く。広げて放置。うつ伏せ状態もあるが、仰向け状態もある。
恐らく、人生で初めて使用済み女性用生理用品をこんなにも大量に目の当たりにし固まってしまったが、ある意味こんな機会は少ないと思い、少しだけまじまじと見てみる。
どれも、吸収する面積いっぱいに血が浸食していて結構出血量が多い事にビックリ。
中国大陸の不意打ちの醍醐味を体験する。


20:35分
隣の女性2人組(大学生)に何時に北京に着くか聞いてみた。
明日の朝9時30分頃になるという。つまり15時間超えの長旅。30歳にして最長時間に挑戦。一気にテンションが上がる。


20:40分
韓国人の女子大生が隣の席に座ってきた。
韓国のヒュンダイに始まり、サムスンがいかに凄いかを熱弁。もしこの場で両社の悪口や批判を言ったら、烈火のごとくブチギレそう。
なんか、両社を好んでいるというより崇拝している。

そして、彼氏が買ってくれたのよ。とiPadを取り出しドヤ顔。突っ込んで良いのか悪いのか判断が鈍る。
ちなみに携帯はhTC ‼

21:19分
後ろの席にかなり鋭利な角度の角刈りの青年を発見。恐らく、頭の形から既に四角っぽい。顔立ちもかなり鋭利なのでカイジと名付ける。中国版カイジとしてリメイクされるのであれば彼しかカイジ役は務まらない。そして、彼の写真をとる。
※その後朝まで彼は何があっても目を覚まさなかった。何という集中力!!


22:03分
おきゃんぴーが隣の中国人と麻雀を打ち始める。

22:15分
再びトイレへ。
便器内で流れていないウンチと遭遇する。この時間帯にはよくある事。
さっき遭遇した、魔法で石になったおっさんが4人に増えていた。
数が増えている、もう何処に洗面台があるのかわからない故、手が洗えない。

23:10分
隣が中国人の男子学生に変わる。
貧乏ゆすりが酷く、こっちがイライラする。日本語を勉強しているらしい。が、ぼくはあまり彼に興味がなく、適度にスルー。ごめんね。

23:44分
歯磨きをしないと寝れないので、歯磨きをしにトイレ横の手洗い場へ。やっぱり席の無い人達(魔法で石に変えられた人達)で洗面台が占拠され使えなかったので、かなりの譲歩をし、トイレで歯磨きをする。
途中何度も吐きそうになるが、歯磨きしないで朝を迎えるのは嫌だったなので、心を鬼にして歯を磨く。
帰り際に、占拠された手洗い場の状況を隠し撮りする。

24:11分
いつのまにか足元の

1:45分
おきゃんぴの足元に出っ歯で角刈りの小太りおっさんが新聞紙をしいて地べたで眠り出す。画的にかなり面白いので写真を撮る。
おっさんのイビキが煩い。そして、足元に寝ているのにもかかわらずこのおっさんの口臭が酷すぎてここまで臭ってくる。おきゃんぴ悶絶。


2:01分
補給として事前に駅で買ってきた水とお菓子を足元の収納スペースから取り出そうとするが、地べたでおっさんが邪魔で取れない。


2:13分
座席頭上のラゲッジスペースから、ぼくの2つ隣の姉ちゃんが荷物を取ろうとする。姉ちゃんのカバンのポケットから缶詰が落下。さっきから地べたで寝ているおっさんの顔面に直撃。ぼくはリアルコントの世界を目の前にし笑を堪えきれず、顔を伏せる。しかし、おっさんは約十数秒後に再びイビキをかいて夢の中へ。

2:20分
おっさんが寝ながら口から泡を噴き出す。ぼくが事前に買ったお菓子に泡がかかっている。お菓子はこの後、捨てることに。

4:37分
突如通路で寝ていたおっさんが消える。途中下車なのか、消されてしまっのかは不明。

5:45分
乗客の活動量が少ないせいか、冷房が効きすぎて両腕をTシャツの中へ。斜め向こう側の青年はタンクトップのまま熟睡。逞しい。

7:01分
隣の日本語習っているとみられる青年が大音量でiPadのレースゲームを始める、ゲーム操作をミスった瞬間高速貧乏ゆすり。


8:31分
乗務員が通路の掃き掃除を始める、新聞紙、ヒマワリの種、空のカップヌードル、よく解らない液体、ビスケットの袋、ティッシュ、竹串、その他が所狭しに捨てられている。清掃員の袋はすぐに一杯に。
これでも昔よりはマシになった。
昔は、乗客の荷物として家畜用にアヒルとか普通に乗ってたからな。。。

8:37分
ぼくも麻雀をおきゃんぴから習う。
どんなことがあってもなかなか起きなかったカイジがこの時ばかりは、身を乗り出して、ぼくの打つ麻雀を興味津々に見つめる。


9:45分
北京駅着。




サマリー
まるで、様々な人の人生を凝縮したような列車の旅だった。